杉真理の世界-MISTONE-

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A Radio Story

ミストーン(MISTONE)

MISTONE

杉サウンドのひとつの完成形を打ち出した記念碑的作品です。まず最初の特徴は初の完全なコンセプトアルバムだと言う事。他のアルバムにもコンセプトはありますけどMISTONEほどではありません。テーマは「時間」。様々な意味の時間の解釈が色々なストーリーを編み出していきます。次の特徴が音の処理。これ以降のアルバムの音の処理はMISTONEが基礎になって作られているような気がします。サウンド面でも、音色の面でも。そんなMISTONEですけど、最初のシングルが「いとしのテラ」だったせいか、ジャケットのイメージのせいか、コンピューターを多用したアルバムというイメージがあります。(ポール・マッカートニーで言うとアルバム『プレス・トゥ・プレイ』に近いような・・・。)シンセサイザーの使用頻度が上がったからと言うのももちろんありますし、前作のSTARGAZERと比べているのかも知れません。あと、どういうわけかこのアルバムは夜とか、悪天候というイメージの言葉が多く使われているんです。「灰色の空ずぶぬれのvisitor(Celebration)」、「午後6時のベルで君は(二人には時間が無い)」、「新しい1日を雨の街で向かえたのさ(七番街の雨の朝)」と言うように、なんとSide1では晴れた空は最後まで出てこないんです。それどころかアルバム全体を通して雨の降ってる曲の多い事(笑)最後のIt's Timeで救われるからいいんですけど(笑)ファンの人気投票をすると必ずダントツのトップで1位を取る「いとしのテラ」が入っているアルバムでありながら、好きなアルバムではいつもSTARGAZEROVERLAPに1位の座を譲るのは晴れ指数の低さがまねく結果なのかも知れませんね(笑)ちなみに、このアルバムと同じ日に発売されたのが佐野元春Visitorsです。興味深い事に2人とも今までの自分のキャリアに無いアルバムを同じ日に出したわけです。しかも、2人ともニューヨークに出かけて。佐野元春杉真理の特徴を説明するのにこの2枚は最適です。同時期の同じ街でコレだけ違う音を持ち帰ってくるんですから。余談ですが、杉さんのオリジナル・アルバムは「OVERLAP」を除くと頭文字がSから始まるタイトルが多かったんですけど今回はデビュー盤以来のの頭文字!こんなところにも原点を感じてしまいます(笑)


発売日


★各曲の感想★

Celebration(Celebration)

さて、今回も冒頭のご挨拶の曲でアルバムは幕を開けます。今回はアルバム自体がパーティーという設定になっていて(前回ではショーでした。)アルバムに針を落とした瞬間にこのパーティー会場のドアをノックした事になるようです。外はどうやら土砂降りの雨でそんな中来てくれたお客様をのっぽのピアニストタップの少年が歓迎するという設定になっています。のっぽのピアニストはこの曲に限らずアルバムの中でピアノを奏でていそうです。ちなみにタップの少年は2曲後のBackstage Dreamerで再登場しますよっ。お楽しみ

お気に入りの歌詞:始まりのない スタートと 終わりのない フィナーレさ

二人には時間がない(No Time)

B面の1曲目にしてもいいくらいのSFチックな曲です。SFチックな曲なのに前後の曲よりリアルに感じるのがとても不思議です(笑)歌詞の内容はちょっとした小説仕立てで1番と2番の違うシーンが最後にひとつの流れになっていくという作りになっています。ギターのフレーズが印象的で昔良く練習したんですけど、あのようにかっこよく弾けませんでした。ライヴではアルバムよりももっとかっこよく弾いています。マー坊(田上正和)は日本一のギタリストです、本当に。ちなみにこの曲でずっと気になってる事があるんです。2分03秒辺りに聞こえる鳥のさえずりのような音がいつも気になっていたんですけど、当時はレコードに傷がついたんだと思っていました。が、しかしCDで聴きなおしても入ってるんですよね、あのさえずりが・・・。あのさえずりの意味が分かる人がいたら是非教えて欲しいです(笑)

お気に入りの歌詞:何故僕は ここにいるのか きっと答えてくれる君を 探してるんだ

Backstage Dreamer(Backstage Dreamer)

Backstage Dreamerアルバムに先駆けて発売された11枚目のシングルいとしのテラ」のB面としてまず、発表されました。実は最初に気に入ったのは「いとしのテラ」よりもむしろB面のこちらの曲でした。曲調も詩の内容もミュージカル調に仕上がっています。ちなみにアルバムでは「二人には時間がない」からベルの音で突然カットインして曲が始まりますけど、実は僕が観たライヴでは「七番街の雨の朝」の途中からベルの音でカットインして曲が始まっていました。そのライヴに出かけてからというもの余計にこの曲が好きになりました♪Celebrationで歌われてたタップの少年はこの曲の最後に曲の主人公によって歌いかけられます。ココまで3曲がひとつのバースになって次の世界にアルバムは進んで行きます。

お気に入りの歌詞:階段を上るように 有名になって 君を幸せにしたいんだ

あの娘は君のもの(About You)

コーラスで杉さんとハモっているのが伊藤銀次。掛け合いのコーラスがNobodyという豪華な曲です。伊藤銀次の方はよく聴かないと、声が混ざって気付きにくいですけど(笑)曲中のコーラスのフレーズ「You got nobody too」は「君の味方は誰もいないよ」という意味と「Nobodyもいるよ」という2つの意味を持っています。歌詞としては「Songwriter」収録の「Send her back to me」に近い内容で昔の恋人と友達の間に芽生えた恋を応援する歌です。「Send her back to me」が繊細な気持ちを描いているとするならば「あの娘は君のもの」はどちらかというと曲調も手伝ってビリー・ジョエルの「あの娘にアタック」に近いニュアンスを感じる事が出来ます。それにしても60’sスタイルの楽曲を作らせたら本当にうまい!今や洋楽好きなアーティストが減ってきたのでほとんど聴く事の出来ないサウンドになってしまいました・・・。いつからこうなっちゃったんでしょうね・・・。

お気に入りの歌詞:傷つきやすい あの娘だから どうか嘘はつかずにおくれ

七番街の雨の朝(Our day will come)

MISTONEで最初に気に入った曲です。ニューヨークの雨に感じた優しさが、帰国後の外苑で降られた雨にダブってこの曲は生まれました。言われてみれば東京ともニューヨークとも取れる歌詞ですよね。でも、やっぱりニューヨークの比率が高いかも(笑)。メグ・ライアンの主演映画のサントラに入ってても違和感無いですよね、きっと。この曲には水色、真っ白、虹色と3つの色が出てくるんですけどその他にも夜の黒だったり摩天楼のグレーだったりとOVERLAPの時のように色彩をイメージさせる歌詞になっています。杉さんのニューヨークのイメージって70年代のビリー・ジョエルにあるのかも知れないですね。所々の音の選び方にそんな気持ちを感じ取る事が出来る気がします。

お気に入りの歌詞:見知らぬ人に囲まれ 生きてく君に 出会えてよかった

スターライトラプソディー(Starlight Rhapsody)

このアルバムの中で最もアイデアが詰まっている曲です。こうして聴いていくとコンセプトを忘れそうになりますけどテーマは「時間」です。時間をテーマにして映画調のストーリー、そして曲調はグレン・ミラー。この曲こそ、MISTONEを代表する1曲なのではないかと思います。この雰囲気がアルバム全体を支配しているトーンを作り出している気がします。内容はパーティーで知り合った女の子のドレスにシャンパンをこぼした主人公が2週間の間に彼女と急接近するという話。そして、この星が生まれてからに比べれば恋に落ちるのは光よりも早いと主人公は歌います。どうです、いいでしょぉ(笑)映画的ですよね?まるでウッディ・アレンの世界です。こんな、曲を聴いて映像がはっきりと浮かぶ曲ってなかなか無いですよね?今後は杉さんの作品の柱のひとつになる作風です。こうしてSide1は青空を見ることなく終わっていくのです・・・(笑)

お気に入りの歌詞:光よりも速く 恋に落ちた夜

Punic in Submarine(Panic in Submarine)

B面の1曲目はおなじみのサスペンス枠です。ニューヨークのマンハッタン島を巨大な潜水艦に例えてその中での混乱を書いた歌です。ジャケットの右下に写っている銃弾とルージュはこの曲に登場する小道具です。そのせいかこの「Punic in Submarine」はこのアルバムのイメージを一番書き表しているのかも知れません。サウンドはドリーマーズのマー坊と嶋田陽一の2人によるものでこの時期のこの2人の存在がいかに杉さんの中で大きかったのかがよく分かります。最初聴いた時はレコード向きな曲だと思ったんですけどライヴで聴いた時にそのかっこよさにビックリした記憶があります。

お気に入りの歌詞:まるで街は密室のようさ 鍵が見つからないよ

Davy's Devil(Davy's Devil)

ここで、ようやく晴れた空がやってきます!セパレーツの水着ゴーカートフラフープといった60’sを意識した小道具がたくさん出てくる曲です。曲中には出てこないんですけど、このセパレーツの水着の色は白なんです。いや、絶対そうですよね。昔のレナウン娘のイメージから言って(笑)(曲中にはカラフルというフレーズがありますけど、僕の解釈はDavyがカラフルなんです。)同じ夏の歌でも素敵なサマー・デイズビーチ・ボーイズ、こちらはフォー・トップス。この辺りの使い分けがなんとも泣かせてくれます♪そばかす顔でどちらかというとパッとしないDavyが夏の強い日差しの中ではとてもチャーミングに変身してみせる。主人公は彼女から目が離せなかったことでしょうね。

お気に入りの歌詞:ゆうべは ごめんよ おそくに 電話して Davy 眠れなかったんだ

Voice-she got a diamond(Voice-she got a diamond)

ストレイキャッツのようなロカビリー・タッチのロックンロールです。この曲には個人的な思い出があって、高校の時に自分のバンドを組もうとメンバーを募ったら、何とギタリストだけ5人も集まっちゃったんです(笑)で、しょうがないからオーディションをやろうと思って課題曲に選んだのがこの「Voice-she got a diamond」。もちろん5人とも全滅で結局ギターは僕が弾くことになりました。ちなみに僕はこの曲のギターは弾けません(笑)曲の内容はまるでタイムマシーンに乗ってやってきたような不思議な女の子の事を歌った歌です。歌詞と曲調がバッチリ、はまっています。

お気に入りの歌詞:あの娘はビートと同じ歳さ Sixteen

冬の海に(Wintry Sea)

杉さんにしては珍しいモダンジャズ風の曲調です。最初はまるでマイファニー・ヴァレンタインを思わせるような暗く重い美しさを持った曲で、前半はもの凄くジャズの雰囲気を持っているのに、いつしかプレイヤーがどんどん杉さんの雰囲気に合わせてモダンジャズを脱していく変化がとてもユニークです。ユニークと言えばジャズの演奏家が参加しているのにアドリヴ・ソロが無いのもユニークですよね(笑)だからこの曲はジャズ風な味付けのポップスと言うよりは、ジャズの人々がポップスに引っ張られていくドキュメントみたいな解釈をしています。最後なんてフォービートのポップスですもの、本当に(笑)ジャズ畑の人たちも杉POPSの魔法からは抜け出せなかったのかも知れません。

お気に入りの歌詞:君を忘れてしまうかも知れないよ

いとしのテラ(Terra)

いとしのテラ杉さんの30歳の誕生日に書かれた曲で1984年4月21日、11枚目のシングルとしてアルバムに先立ち発表されました。(B面はBackstage Dreamer)ファンの選んだ好きな曲で常に1位を獲る人気曲です。味の素のスポーツ飲料「TERRA」のCMソングとしても使われました。最初アルバム「Stargazer」の雰囲気を期待してた僕は、この曲を耳にしてがっかりした記憶があります(笑)専門的なことを書くとコード進行が平凡だったのが残念だったんです。だからB面のBackstage Dreamerばかり聴いていた気がします(笑)でも、ライヴで聴いたらすごく好きになりました。その日からあまりコード進行へのこだわりが無くなった気がします。当時付き合ってた6月生まれの女の子が好きだった曲で、今でもこの曲を聴くと彼女の事が頭をよぎります(笑)

お気に入りの歌詞:六月の神話は 雨の音がしてた

Celebration(reprise)(Celebration(reprise))

repriseってあまり日本のアルバムではやらないですよね?最近、海外でも少ないか・・・(笑)repriseで思い出すのがビートルズの最高傑作サージェント・ペッパーズ。きっと、杉さんもココからインスパイアされたんでしょうね。歌に参加しているのはこのアルバムに参加した全てのゲスト、そしてスタッフ。現場のいい空気の伝わってくる1曲です。後のBOXPOPSに収録されてるWhat time?を彷彿させますよね?

お気に入りの歌詞:Try to get it over the night

It's time(It's Time)

君は天使じゃない」路線のバラードです。アルバムのタイトル・ナンバーとも言える曲でMistoneに収められてる様々なストーリーの鍵を握る曲になっています。言い変えれば映画「Mistone」の主題歌とも言える存在です。僕はこの曲を聴くと、スクリーンに映しだされたスタッフ・ロールを背に人々がゆっくりと余韻を楽しみながら映画館を出る風景を思い浮かべてしまいます。まるで「サブリナ、きみのことさ」の世界ですよね(笑)歌詞は別れとも出会いとも再会とも取れる内容で、Mistoneのそれぞれの曲に当てはめて聴くのがいいみたいです。例えば「冬の海に」の気分の時には別れの曲に聞こえるし、「スターライト・ラプソディー」な気分の日はハッピー・エンドの曲に聞こえるといった具合です。そういう風に考えてみると、このアルバムのを締めくくる重要なポジションにふさわしい名曲です。

お気に入りの歌詞:ずっと 君は心の 大切な時計さ

タラップにて(On the Trap)

そして、本当にアルバムの最後を飾るのはカーテンコールのような1曲です。前のIt's Timeがアルバム全体を振り返っていたのに対してこの曲は杉さんのキャリアそのものを振り返っています。なんて、壮大なテーマなんでしょう(笑)まず「セリーヌ」のイントロのフレーズから曲が始まって「夢見る渚」や「恋のかけひき」のSunsets、「カトリーヌ」や「バカンスはいつも雨」のRainydays、「スクールベルを鳴らせ」のCrystalleyes、「サスピション」のSleepless night、「セリーナ」のNewspepers、「風の季節」のBus stopなどなど・・・。特に出場回数が多いのが「懐かしき'80」からの言葉たちでClocks、TVs、Highway、Merry-go-roundと4回も出てくる上に一番最後のフレーズも「懐かしき'80」!このアルバムが「懐かしき'80」からインスパイアされて作られた事が良く伝わってきます。そういう意味から言ってもやっぱりCD2枚組の再リリースは出来れば「Mistone」と「Stargazer」のセットの方が杉作品の理解が深まる気がします。

お気に入りの歌詞:I remember the days Good-bye 80's


収録曲目

太字はシングル曲、Bonus Tracksは2007.07.25の再発盤のみの収録です。

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